君のスガタ
 今なんで言えないの。

 いろいろ整理するってなに?

 待っていてほしいんだって言われたら、待つしかなくなるじゃん。

 ずるい。

 こんなの言い残したら、待つ以外の選択肢はないのに…

 分からなかった。だけど、彼と会ったような感覚…いや、会ったことのないけどどこか何かを感じた。

 私は引き留めたが、声がでなかった。

「……っ…今日試合お疲れ様。ありがとうね」

 何も言わない私に目を向けてから、松永先輩は手を挙げて、じゃあと鞄を背負って、何事もなかったように去っていた。

 あっという間に松永先輩と会話が終わってしまった。

 試合が終わって、松永先輩がぐっすり眠っていた私をおんぶして、起きたらカフェで話をした。

 初めて、真正面に向かって、たわいのないことで笑った。

 ほら、見て。これ。

 松永先輩は自分の携帯を私の方に見せてきて、笑った。松永先輩が好きなキャラクターを私に見せて、学校でも見せないニヤニヤした顔で少し高い声で伝えてきた。

 それを見て、私までも頬が緩んだ。

 私は歩いて、家に着いた。

 両親は試合の結果を聞いてきて、負けたことを伝えるとよく頑張ったと頭を撫でてきた。
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