君のスガタ
 松永はなんでもできていいよね、俺もイケメンで高身長でスポーツも万能とかになりたかった。

 もう最強じゃん。

 学年の同級生達は俺のイメージをコソコソと話したり、話をしている時にお前はいいよななどと誰かと比較されて、俺がいいというのは何かが嫌だ。

 自分が完璧と言われる自分が嫌いできらいでしかたない。

 俺は椅子に座り、ため息を吐いた。

 その時、ダンスをしている四人組がかけている歌ではなく、広場から流れる歌だった。

 今流れている歌はよく中学時代に聞いたコブクロの未来だった。

 切なさと見えない未来の先が不安で不安で仕方ない。

 こんな完璧な自分だけしか見てくれない人は見たくもない。

 なんでもできることがいいことなのに、俺は自分自身が認められない。

 一人で座り込んで、目から涙が溢れた。

 目尻を手で擦って、涙が頬につたわないように必死に手でゴシゴシした。

「はぁ、柚はこんな俺なんて好きじゃないだろう。俺は好きな人に好きって言われる資格ないんだよ。柚。俺をどう思ってるのか聞いたよな。…俺は好きだよ、柚」

 一人で泣きながら、柚に好きだという。

誰にも聞こえないくらいの小さい声とともに歌の中で溶け込んでいた。
     
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