君のスガタ
「なに? 阿部さん。俺、めぐみちゃんに何をしたっていうの」

 堺君は前より態度も大きく、口調も別人みたいだ。

 こんな短期間で人は変わるだろうか。

「堺君はめぐみと楽しそうにしてたよね。なんで急に冷たくするの? 少しはめぐみの気持ち考えたことある?」

 私は堺君の前に立ち、めぐみは私の後ろで話を聞いていた。

 堺君は目を左方向へ変えて、視線を外した。

「好きでこうなったんじゃない。ただこうしないといけない理由があったんだ」

「理由?」

 私は問うと、堺君は下を俯いた。

「好きが強くなるから…」

 堺君から思いがけのない言葉が返ってきたので、私は後ろにいためぐみの方に振り返る。

「好きって、なにが?」

 私は聞くと、堺君は口を開いた。

「俺にとって、好きは押しつけになってしまうから。本当はめぐみちゃんのことはいいなぁって思ってるよ、本当は。でも…俺は押し付けないことが俺の形だと思うんだ」

 堺君は私から目を逸らして、めぐみが前に出て、本当? と堺君に聞いた。

「そうだよ。めぐみちゃんは俺に好意を抱いてくれたことは知ってた。だからこそ、俺は…」

 堺君が言う前にめぐみは堺君を抱きしめた。
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