君のスガタ
 松永慶先輩は白い歯を見せて、満面な笑みを浮かべていた。

「上手ですね」

 私は打ち返した球を後ろに振り向き、言う。

「……まぁ、運動全般得意やからな」

 松永慶先輩は親指を立ち、嬉しそうに声を発する。周囲には誰もいないので私たちの声しか聞こえない。

「…そうですよね。元々運動も勉強も完璧ですもんね」

 私はなんでも出来る人が羨ましかった。

 羨ましく思っても、私は私でしかない。

「はぁ? 本当にそんなこと思ってんの」

 松永慶先輩は急に真面目な顔で私に言い返してきた。

「だって、本当にそうだと思ってますよ、みんな」

 私は当たり前のように言い、ボールを拾って声を発した。

 なぜか松永慶先輩は面白くなさそうに私の方へ来た。

 私は立っていたので、私の方に来た彼をただ見つめた。

「…なんですか」

 私の顔につきそうなくらい松永慶先輩は無言で近づいてきた。

「……っ……」

 私はまじまじと松永慶先輩が私の顔を何も言わずに見てきた。

 なんか言ってよ、なに? 

 こんな近づいて来て、何も言わないつもり。

 近すぎて、どこ見ればいいかわからない。

 ってか、肌きれいすぎじゃない。男なのに
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