君のスガタ
 学校は暗くて、生徒の声すら聞こえなくなっていた。

なので、終始無言できまずい。

「………っ…いいですよ。ここで」

 私は少し歩いたら、松永慶先輩に伝えた。

「……暗いから家まで送るよ」

 松永慶先輩はズボンのポケットに手を入れて、私を見ずに低い声で言ってきた。

「…いいですよ。送って頂かなくて」

 私は立ち止まって、松永慶先輩に言う。

「……さっきは八つ当たりみたいになって悪かった」

 松永慶先輩は頭を下げて、謝った。

「……いや、私が悪いんです。あんなこと言ったから」

 申し訳なさそうに眉を下げて、松永慶先輩に言う。

 私だって、松永慶先輩の立場だったら、否定するかもしれない。

 完璧じゃないって言いたくなる。

 それは自分の気持ちでそう思うかもしれない。

 だけど、完璧な人は羨ましく思えてしまう。

「気にしなくていいよ。俺のただのうわ言だし」

 松永慶先輩は歩きながら、頭を両手で組んでなぜか笑っていた。無表情だったのに。

「…いえ…」

 私は声を発して歩いていたら、もう私の家に着いていた。

あっ、ここ家と言おうとした瞬間、もう松永慶先輩はいなかった。
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