君のスガタ
 話しながら歩いていたら、松永慶先輩と友達らしき人が通りかかった。

 私のことは気づいていないよね、松永慶先輩は。

 そう思って私は素通りしようとした。

 私は部活動の仲間たちと話していたし、松永慶先輩は気づいていない。

 そのまま素通りした。

 これでいいんだ、気づかなくて。

 そう思っていたら、松永慶先輩の友達らしき人物が声を発した。

「あれ、あの子。慶とよく話してる子だよね」

 友達らしき人物が足を止めて、私に声をかけてきた。

「え?」

 私は知らないフリをしていたのに、松永先輩は友達らしき人物の声で気づいた。

 仕方なく足を止めてから私は振り向き、ため息をついて聞き返す。

 すると、松永慶先輩と友達らしき人物が私を見てから、私の方へ来た。

「柚。さっき行ってるね」

 部活の先輩が気を遣わせたのか、手を上げて、先に行った。

 めぐみもグッと右拳を握って、真顔で私を応援するように口元でファイトと言っていた。

 ファイトって。なにを応援しているんだ。

「きみ、よく慶と話している子だよね。慶ってなにも言わないからさ」
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