君のスガタ
「柚。松永慶先輩はイケメンだし、学年でも有名だけど。あんな噂聞いたら心配になる。
斗真先輩も笑ってごまかしていたし、あの人たちの周りに柚を巻き込むのは私は嫌だ」

 めぐみは自分のことのように言い、私を説得した。

だけど、私はその説得に聞き耳をたてなかった。

 私達は立ち止まった。

「話を聞いてみないとわからないよ」

 私はめぐみに反論した。

 そういう人じゃない。

 それだけは確信を持って言える。

 根拠はないけど……

「柚! 柚は真面目だし騙されやすいんだから」

 めぐみは本当に私のことを心配しているのは分かるけど、松永慶先輩なりの事情があるのかもしれない。

「…めぐみには私の足りなさを補ってくれているけどこのことは自分でなんとかするから。ねぇ?」

 私はただ今の気持ちを伝えたかった。

 目を逸らして寂しそうにした表情が目に映る。

 めぐみは私が道をそらさないようにして言葉にしてくれている。

「…そう…」

 めぐみは目を落として、返事をした。

 その時、葉っぱがめぐみの頭に落ちてきた。

「…うん。ありがとね。めぐみ、葉っぱついてるよ。ほら」

 私はお礼を言い、めぐみの頭に葉っぱがついていたのですぐ取った。

 それをめぐみの目の前で笑顔で応える。

 めぐみは口元に手を添えてから、フッと目を細めて口角を上げていた。

「柚がそう言うならいいけど。私は反対だからね。それだけ」

 立ち止まっていためぐみはそう言った後、一歩ずつ足を踏み出していた。

 私はめぐみに歩み寄り、めぐみの肩を手で触れて、笑顔を浮かべた。精一杯の笑みで。
 
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