君のスガタ

「きよしはなんで王子役引き受けたの? 絶対やりたくないでしょ」

 私は台本を両手に持ち、無のきよしに聞く。

 きよしは少し口を開けてから顔を上げて黒目で私の瞳に問いかける。

「……柚がいるからだよ。柚はこういうの苦手だけど。めぐみが言ったから後にも先にも引けなくなったんだろ」

 きよしはスラスラと自分のことを話していた。

 私が聞いてもなにも言い返してこなかったのに今日は一段と話すし、私とめぐみの名前まで呼んでる。

 ってか、話せんじゃん、きよし。

「きよし。普通に話せるよね」

 私は目を丸くして、きよしを凝視する。

「……柚が本当にやりたいと思ってなさそうだったから」

きよしは台本に目を通しながら、小声で私に言い放つ。

「な、なんで」

「めぐみが言ったから、仕方なくだろ。でも、真面目にやってるのは迷惑にならないようにしてるから…」

 きよしは最後のページを読んでから閉じて私の目の前にきて、あぐらをかき私をただ見つめてきた。

「…きよし…あんたなにしたいの?」

「…いや…普通に見ているだけど? それがなに?」
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