君のスガタ
 きよしは平然としてニヤニヤした顔で私の顔をキスできそうなくらいの近さで見てきた。

 自分の中まで覗き見されている気分だった。

 きよしはいつも離れた距離で話しているのに、急に私のパーソナルスペースに入ってきて、戸惑う。

「……近いんだって」

 私は顔を両手で塞いで、顔を赤くして言う。

「そうかな?」

 きよしは何もなかったように首を傾げた。

「おーい、柚ちゃん」

 女子クラスメイトが私に声をかけてきた。

「どうしたの?」

「あの……松永慶先輩が来てるよ」

 そう言いながら、教室のドアに松永慶先輩がいた。よっと手を上げて、ドアに寄りかかっていた。

 なにごと? 

 松永慶先輩が私の教室に来てる。

「え? なに」

 私は独り言を呟きながら、無表情で立っていた松永慶先輩を苦笑いで見て、礼をした。

「誰だ、あいつ」

 きよしは何故か松永慶先輩を睨んで、私に聞く。

「松永慶先輩。学校で有名なテニス部の先輩。聞いたことない?」

 私は立ち上がって、きよしに聞く。

 きよしは返答せずに嫌そうな顔していた。

 私はきよしの返答を待たずに、ドアにいた松永慶先輩の元へ行き、声をかける。
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