君のスガタ
 私は聞き返すと、きよしはなんでもないとだけ言って、ズボンのポケットを片手に入れて、教室を出て行った。

「ちょっと! まだやることあるんだけど!」

 私はきよしに大きい声で叫ぶ。

「…まだ、衣装の打ち合わせあるのに……」

 私は腕を組んで、去っていくきよしの方を見て、言う。

「なにしたんだろう」

 私はきよしの方を見て、一人で呟く。

      *

「あの! ボサボサ髪の先輩」

 名前はなんか言っていた気がするが、忘れたのでボサボサ頭の先輩と呼んだ。

「……っ」

 その声にボサボサ頭の先輩は振り向いた。

「ん? なに……あー、さっき柚と一緒に話してた人か。なに?」

 ボサボサ頭の先輩は首をひねって、冷たい目をしていた。

 柚にしか興味がないのかどこか世間より上から見上げているような気がした。

「あの…柚のことで少し話あるんですけど」

 僕はボサボサな髪の先輩のことを気にせずに柚について聞きたいことを口に出す。

「なに? 柚のこと。俺早く帰りたいんだけど」

 めんどくさそうに髪をかいて、だるそうにしていた。
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