君のスガタ
 その時から僕は好きの想いが徐々に強くなった。

 僕は柚に一回話しかけたんだ。

 話すようになってから、柚は僕のことを友達と認識してくれた。

 柚は話しかけてはくれるけど、僕は無視した。

 いつも声を掛けてくれているのに、なにを話したらいいか分からなくて、目をそらした。

       *
 それが今の結果だ。

松永慶先輩と関わる中で柚は柚なんだけどなにかが変わった。

 明るくなった気がするんだ。

 僕はなにもしていない。

何もしてないのに、このまま負けるのは僕は嫌だ。

「……っ……」

 僕は右拳を握りしめて、去っていた松永慶先輩を見た。

「…僕は……僕は……」

 僕は前を向いて、教室に戻った。

 戻って、柚に話しかける。

「柚」

「なに? きよし。早く衣装の寸法測るから。なにしてたの?」

 柚は首を傾げて、僕を見てきた。

 僕のことなんて気にしてないし、友達として接している。

 なんとか柚のことを男として意識してもらうしかない。

 柚、僕は言葉にしようと思う。

 言葉にする。

うまく伝えられなくても。

 口下手でも。

 柚に素直に伝える。

「なんでもない。やろう」
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