君のスガタ
 私はきよしの方に振り向いた。

 きよしは私の前に一歩足を踏み出して、私を見てくる。

「なに?」

 私はきよしに聞き返す。

「これでも僕のことどう思う?」

「え?」

 急な質問に私は目を丸くする。

 きよしのことは友達だと思っている。

 きよしも同じじゃないの?

ただのクラスメイトなの。友達じゃないの。

「いや…聞いてみただけだから。答えなくてもいいから」

 何故か悲しそうに下を向いてから、外に出ようと歩き始めた。

 そんな彼をほっとけないし、なんでこんな表情しているのか気になる。

「きよし」

「なに?」

 きよしは私の方を振り向いて、優しい声で目を細めていた。

 その眼差しはどこか迷いがあるけど、もう意志は固まっている瞳だった。

「なんでそんな顔しての? 私に聞きたいことあるならちゃんと言ってよ」

 私ははっきりときよしに言う。

 きよしは真顔で私を見てから、声を発した。

「……今は言わない。柚が僕の方を意識してくれるまで待つから」

 きよしはそう言ってから、少し微笑んで歩いていた。

 私だけ呆然と立ち尽くしていた。

 きよしも私と同じように思ってるよね、きよし。

私は前にいるきよしに歩み寄る。

 彼は私を友達として見ているのだろうか。

 そんな思いを胸にしまい、きよしとたわいのない話をして、家路に着いた。

 家に帰ってきたら、フッと思い浮かんだのは松永先輩だった。

 松永先輩は今なにしてるかな。

 きよしのことを今まで考えていたのに、なぜか松永先輩の表情やしぐさが頭の中からカメラをズームするかのように
松永先輩がお大きく私に映る。

 私は知らなかった。

 松永先輩が何を思って、何を考えているのか私は本当に知らなかった。

 知らないからこそ松永先輩を知りたい気持ちがなかった。
 
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