君のスガタ
 それは、松永先輩だった。

「いやいや、運命なんてないよ」

 反抗するかのようにきよしが言い放つ。

「あるよ。きよしはそんな人がいるってことを知らないだけだよ」

 松永先輩はにこやかに口角をあげて、両腕を腰につけて真実かのように大きい声で発する。

 松永先輩が言うなら、間違えないし。

 ってか、先輩にも運命の人いるのかな。

 かっこいいし、スポーツできるしね、松永先輩だし。

「先輩……」

 女子委員長は先輩と言って、泣いていた。

「あ、そこの女子泣かないの。慶もなんか言ってやれよ」

 後ろから斗真先輩がひょっこと出てきて、いつものように元気な声で女子委員長に言う。

「……それだけだ。柚、頑張れよ」

 松永先輩は私に手を振って、細い目をして微笑んでいた。

 それらを見たクラスメイト達はいいな、松永先輩に手を振ってもらっていいななどの言葉が行き渡っていた。

「よし、やるよ! 先輩の言葉をむだにしないように」

 女子委員長は泣いた目を擦ってから言う。

「やろう! あと、三十分あるから頑張ろう」

 男子委員長は右手を挙げて、笑顔でクラスメイトに声を発する。

「「おっー!」」
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