君のスガタ
 念押しして、俺はズボンのポケットに手を突っ込んで下を向き、斗真に言う。

 なんもない、そうに決まってる。

そうじゃないと俺は好きって感情を諦めたのに…

 こんなどうしようもない俺の好きを俺自身自分はどう受け止めればいいのだろう。

 斗真と歩きながら、草花と焦点が合い、心の中で声をかける。なぁ、俺をどう思う? 花さんよ。声をかけても、返事はないに決まってる。

 だけど、その瞬間風がなびいた。

 声ではないけど、なにか反応してくれた。

 そう思っているならそうしなさいと言われてるように思えた。

 俺は斗真とともに教室へ戻った。

「天海高校。天海祭を始めます。一年に一度の学園祭。皆さん、楽しんでください」

 アナウンスの声が学校中に響き渡り、校内は騒ぎ始めた。

「天海祭、始まったな」

 めぐみは家から持ってきたのであろうチョコを一口食べて、口内をモグモグしていた。

 暑いから溶けていると思っていたが、少し溶けているだけだった。

「だね」

 私は前を向いたまま、校内を歩いていた。

「あのさ、柚。誰かに誘われてないの?」

 めぐみは唐突に真顔で聞いてきた。

「え?」

 私は目を丸くした。
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