人助け契約婚の結末 ~守るからここにいろ。副社長の優しくて幸せな命令~
2
目が覚めた和未は、見覚えのない天井に戸惑った。
ぼんやりと周囲を見て、それから昨日のことを思い出す。
昨日はとんでもない一日だった。
起き出して、悩む。
ここではどう行動したら正解だろう。殴られないためには、どうしたら。
結局、朝ご飯を作ることにした。家政婦が必要だと言っていたし、きっと家事をしても怒られないだろう。
大きな冷蔵庫を漁って考える。洋食にするか、和食にするか。
ダイニングを見渡し、洋食に決めた。
トーストを作ってお湯を沸かす。IHにフランパンをかけ、熱したところでベーコンを焼いて目玉焼きを作る。インスタントのスープを見つけたから、それも出すことにした。
ちょうど完成したところで晴仁が起きて来た。
「おはようございます。申し訳ございません、朝食を用意させていただきました」
「おいしそうだな」
和未は驚いた。そんなことを言われたのは初めてだった。
顔を洗った彼は、戻って来て聞いた。
「君の分は?」
「あとでいただきます」
「そうか。洋食にしたのはなぜだ?」
しまった、怒られる。和未は震えながら答えた。
「コーヒー豆の瓶が使いやすい位置にありました。よくコーヒーをお飲みになるなら朝食にも飲むと思いました。炊飯器はからでしたから、洋食を好まれるのだと思いました」
「なかなかいい観察力と推察力だ」
まさか褒められるなんて。和未は目を丸くした。
朝食を食べ終えた彼は言った。
「うまかった。ありがとう」
和未の目から涙があふれた。
「なぜ泣く?」
「うれしいんです。今まで一度もおいしいなんて言ってもらえなくて。うれしくて泣くなんて幻想だと思ってました。本当にそんなことあるんですね」
「そんなに感動することか?」
顔をしかめた晴仁を見て、和未は涙を拭った。機嫌をそこねたかもしれない、と怯えた。
「申し訳ございません、下がります」
和未は自室として与えられた部屋に下がった。