人助け契約婚の結末 ~守るからここにいろ。副社長の優しくて幸せな命令~
その夜、和未は晴仁の夕食を作って待った。
「食材を使わせていただきました。申し訳ございません」
彼女は晴仁を見るなり謝罪した。
「かまわない」
彼は先にシャワーを浴び、それから食卓についた。
豚肉のアスパラ巻きにポテト、サラダ、ひじきの煮物、大根の味噌汁、ごはん。
温め直された食事はおいしそうに湯気をあげている。
「君はもう食べたのか?」
「いただきました」
そうか、と晴仁は食べ始める。
「うまい」
一口食べた晴仁は思わず言っていた。
和未は、今度は泣かないように気を付けた。
だが、うれしくて頬はどうしても緩んでしまう。
こんな姿を見られたら気持ち悪いと言われるのに。家族にはいつもそう言われていた。
だが、晴仁はなにも言わずに完食し、食器を自分で食洗器に入れていた。
手間をかけさせてしまったと焦るが、晴仁は文句を言わないので和未は驚いた。
「洗い物……手で洗わなくていいんでしょうか」
どきどきしながら聞いた。
「食洗器があるのに?」
和未はまた驚いて、それから、ありがとうございます、と頭を下げた。
晴仁の視線が自分の手に向いていることに気が付いて、恥ずかしくて手を後ろに回した。
「手荒れなんてレベルじゃないぞ。その状態で家事をさせられていたのか」
彼の呟きには答えず、和未は別のことを口にした。
「今日は宅配便がたくさん届いていました」
和未は彼の気を逸らしたくてそう言った。報告しなければならないことでもあった。
「注文した君の服だろう。使ってくれ」
「私の?」
「文字通り、身一つで来たんだ。なにもないと困るだろう」
「ですが……」
「下着や足りないものは自分で買ってくれ」
彼は十万円を彼女に渡した。
「ありがとうございます」
和未は深々と頭をさげた。
それで会話は終わった。