人助け契約婚の結末 ~守るからここにいろ。副社長の優しくて幸せな命令~
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異変が起きたのは三日後だった。
晴仁が家に帰ると、和未が倒れていた。
なにが起きたのかわからないまま、救急車を呼んだ。
運ばれた病院で、彼は驚くべきことを告げられた。
「奥さん、ひどい栄養失調ですよ。ちゃんと食べさせてますか?」
医者の声には怒りがあった。
「栄養失調!?」
言われて、思い返す。彼の前で彼女がなにかを食べるのを見たことはなかった。
「手もひどく荒れてましたよ。あちこちに痣もあって。病院に行かせないのも食べさせないのもDVですよ」
疑いの目に、俺じゃない、と喉まで出かかった。
点滴を終えて家に戻ると、彼女にソファに座るように言った。
だが、和未はソファの前の床に正座した。
「なぜ床に?」
「私なんかがソファなんて許されません。病院代も払えないのに連れて行っていただいて、申し訳ございません!」
土下座する和未に晴仁は頭を抱えた。
「いろいろ言いたいことはあるが、今は置いておこう。栄養失調だと言われたが、食事はとっていたのか?」
「申し訳ございません! 食べました!」
がばっと和未は頭を下げる。
なぜ謝るのか、晴仁は理解できなかった。
しかし食べているのならなぜ栄養失調になるのか。
「なにを食べた?」
「にんじんの皮のきんぴらとか、大根の皮を焼いたりとか……。申し訳ございません、自分のために料理をしてしまいました」
ツッコミたいところはあれこれあるが、晴仁は状況の確認を優先した。
「ほかには?」
「ありません、本当です!」
晴仁は額に手を当て、天を仰いだ。そんな状態なら倒れるのも当然だ。