人助け契約婚の結末 ~守るからここにいろ。副社長の優しくて幸せな命令~

***

 異変が起きたのは三日後だった。
 晴仁が家に帰ると、和未が倒れていた。
 なにが起きたのかわからないまま、救急車を呼んだ。
 運ばれた病院で、彼は驚くべきことを告げられた。

「奥さん、ひどい栄養失調ですよ。ちゃんと食べさせてますか?」
 医者の声には怒りがあった。
「栄養失調!?」
 言われて、思い返す。彼の前で彼女がなにかを食べるのを見たことはなかった。

「手もひどく荒れてましたよ。あちこちに痣もあって。病院に行かせないのも食べさせないのもDVですよ」
 疑いの目に、俺じゃない、と喉まで出かかった。

 点滴を終えて家に戻ると、彼女にソファに座るように言った。
 だが、和未はソファの前の床に正座した。

「なぜ床に?」
「私なんかがソファなんて許されません。病院代も払えないのに連れて行っていただいて、申し訳ございません!」
 土下座する和未に晴仁は頭を抱えた。

「いろいろ言いたいことはあるが、今は置いておこう。栄養失調だと言われたが、食事はとっていたのか?」
「申し訳ございません! 食べました!」
 がばっと和未は頭を下げる。
 なぜ謝るのか、晴仁は理解できなかった。
 しかし食べているのならなぜ栄養失調になるのか。

「なにを食べた?」
「にんじんの皮のきんぴらとか、大根の皮を焼いたりとか……。申し訳ございません、自分のために料理をしてしまいました」
 ツッコミたいところはあれこれあるが、晴仁は状況の確認を優先した。

「ほかには?」
「ありません、本当です!」
 晴仁は額に手を当て、天を仰いだ。そんな状態なら倒れるのも当然だ。
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