人助け契約婚の結末 ~守るからここにいろ。副社長の優しくて幸せな命令~
「ここに来るまでは食事はどうしていた?」
「家族が残したものをいただきました」
「残らなかったときは」
「食べません。こんなゴミなんかいらないって捨てられたときは、ゴミ箱から拾って食べました」

 晴仁は絶句した。
 だからか、と、同時に納得もした。
 妙にやせていて、すごく小柄だ。ろくに食べさせてもらえず、成長できなかったのだろう。
 晴仁はキッチンのストックを漁った。おなかに優しいものを探して。
 おかゆのレトルトを器に出すと、レンジアップする。
 それをダイニングテーブルにどんと置いた。

「食え」
 和未は、戸惑って彼を見上げる。
「食えと言っている」
 和未はおどおどと立ち上がり、おかゆの入った器とスプーンを手に、床に座った。

「どうして床に?」
「私は床で食べるのが当然だと言われました」
 晴仁はまた頭を抱えた。器をとりあげ、テーブルに置く。

「テーブルで食え」
「でも……」
 動こうとしない和未に焦れて、晴仁は彼女を抱き上げた。

「――!」
 驚く和未にかまわず、椅子に座らせる。
「このあとは食べさせてやらないといけないのか?」
 和未の背を覆うようにして、晴仁が覗き込む。間近に晴仁の顔が迫っていて、和未は顔を赤くした。

「い、いただきます」
 晴仁の監視を受けながら、和未はおかゆを食べた。
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