人助け契約婚の結末 ~守るからここにいろ。副社長の優しくて幸せな命令~
 外の物置小屋が自分の部屋になった。掃除道具に囲まれて縮こまって過ごした。夏は暑くて冬は寒かった。

 殴られて、蹴られて、罵られて。
 泣くとさらに殴られるから、必死に我慢した。
 母がつけてくれた「なごみ」の名前をもじってゴミと呼ばれた。
 
 逆らえば暴力が降ってくるから、命令には盲目的に従った。
 それでも彼らの気が変わったり納得のいく出来ではなかったりすると罵詈雑言や暴力を浴びせられた。

 暴力と暴言、どちらがましか、考えたこともある。
 暴力を受ければ暴言のほうがまし、暴言を浴びれば暴力のほうがましだと思った。
 暴力と暴言の両方を受けたときには、死んだほうがましかもしれないと思った。

 お風呂もろくに入らせてもらえず、服の着替えもなく、臭った。
 だから学校でも嫌われ、いじめられた。給食をがっついて、笑われた。

 服が小さくなると、廃品回収の中から、こっそり黙って服をもらった。
 すぐにクラスメイトにばれて、泥棒、乞食、と罵られた。
 先生は腫れ物に触るように彼女を扱った。

 誰も彼女を助けてくれなかった。
 時間があるときは図書室の本を読んだ。借りて帰るとゴミのくせに生意気だと破られたから、二度と借りなかった。

 本を読んで、児童相談所の存在を知った。
 助けを求めて家からこっそり電話をかけた。
 数日後に大人が来て、玄関で両親と話し合っていた。
 少しは状況が良くなるだろうか。
 そう期待していた。
 結果、ひどくなった。

「お前が言いつけたのか!」
「違います!」
 和未は否定したが、激しい折檻を受けた。

 こんなことなら電話などしなければよかった。
 逃げても警察につかまったから、あきらめた。
 高校からは内職もやらされたが、収入はすべてとられた。
 ずっとそうして生きていくのだと思った。
 だが。

「俺と一緒に来い。逃がしてやるから」
 颯爽と現れた晴仁。
 本当に、逃げることができるの?
 あなたが私を助けてくれるの?
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