人助け契約婚の結末 ~守るからここにいろ。副社長の優しくて幸せな命令~
あふれた涙に気が付いて、和未は目をさました。
時計を見ると、もう六時だった。
涙を拭って起きて、朝食を用意した。二人前を用意し、一皿に盛り付けてテーブルに置いた。
「盛り付けも二人分にしろ」
起きて来た晴仁に言われ、和未は慌てて盛り付け直した。
食後、晴仁は食器を食洗器に入れて出勤した。一人分は手つかずでテーブルに残された。
和未はおずおずとテーブルについていただいた。
彼が自分にきちんと食事をくれた。気付いて、胸が温かくなった。
夜、晴仁はチョコレートやらゼリーやらプリンやら、いろいろ買って帰って来た。
「食え」
夕食後、晴仁にプリンを出されて戸惑う。
こういうおいしそうなものは自分が食べていいものではなかった。
「……命令だ。食え」
和未は震えた。命令に従わないと殴られる。
席に座って震えながらプリンを食べた。給食の固いプリンとは違っていた。なめらかでやわらかく、甘くて甘くて、しびれそうだった。
「おいしい!」
思わず晴仁を見ると、彼はにっこりと微笑んでいた。
心臓が止まりそうだった。
そんな優しい微笑を向けられるなんて、亡くなった母以来だった。
あふれた涙を必死にこらえた。きっと、怒られてしまうから。
「泣くのを我慢しなくていい」
晴仁が手を上げた。
殴られる。
びくっと震えると、その手は和未の頭を優しく撫でた。
嗚咽をこらえきれなくて、和未は泣きながらプリンを食べた。甘くておいしいはずのプリンは、しょっぱくなってしまった。
土曜日。
「そろそろいいか。出掛けるぞ」
先に昼食を終えた晴仁は、和未が食事を終えるのを見計らって言った。和未は恐れ多くて彼と一緒に食べられなかったからだ。
「行ってらっしゃいませ」