人助け契約婚の結末 ~守るからここにいろ。副社長の優しくて幸せな命令~
 和未はこれまで自分で髪を切っていた。肌の手入れも化粧もしたことはなかった。それらをやってもらって、どきどきした。初めての化粧は肌に膜ができたようで落ち着かなかった。
 迎えに来た晴仁は、和未を見て微笑んだ。

「いいじゃないか。綺麗だ」
 和未はカーッと顔を赤くした。
「ありがとうございます」
「そのほうがいい」
 そう言う彼の目は優しくて、胸が高鳴る。
「謝るより、礼を言ってくれ」
「はい」
 和未はどきどきと返事をした。

 次に下着フロアに連れられ、女性店員にあずけられた。
 晴仁は化粧品や服やバッグや靴、アクセサリーも買ってくれた。それらは全部宅配で届けられることになった。
 携帯ショップに行き、スマホを買い与えられた。
 初めてのスマホに悪戦苦闘した。

「すぐ慣れるだろうが……最初はこっちからも操作できるようにもしておく」
 晴仁は和未のスマホに遠隔操作できるアプリを入れた。迷子になったときのために、追跡アプリも入れた。

「困ったら言え。教えてやれないときは代わりに操作してやる」
「ありがとうございます」

 その後、スマホケースを選べと言われて戸惑った。自分のためになにかを選ぶなんて長いことしなかったから。
 ケースがずらりと並ぶ前で立ち尽くしていると、晴仁が聞いて来た。

「好きな色は?」
「緑とか青とか……」
「好きな動物は?」
「猫です」

 それを手掛かりに、晴仁はパステルグリーンに猫の柄のケースを買ってくれた。スマホにはめてから和未に渡す。
「ありがとうございます。でも、どうしてここまでしてくれるんですか?」
 晴仁はふっと笑った。
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