人助け契約婚の結末 ~守るからここにいろ。副社長の優しくて幸せな命令~
「お前の親とはとっくに話がついている。婚姻届けも受理されて、彼女は正式に俺の妻だ。用があるなら俺に連絡しろ。彼女につきまとったら法的に制裁する」
「なによそれ!」

「行くぞ」
 晴仁は和未の手を引いて歩き出した。
 つないだ手が熱くて、和未はどきどきしていた。

***

 家に帰った紅愛は、怒って両親に愚痴を言った。
「今日、ゴミを見たの。あいつ結婚したなんて言ってたのよ!」
「そうなの、石霞エンジニアリングの御子息なのよ」
 母の返答に、紅愛は驚いた。

「知ってたの?」
「社長から連絡があったからな。ゴミを渡して融資がもらえるなら、相手なんぞ誰でもいい」
 父が言う。

「じゃあ、じじいと私が結婚しなくてもいいじゃない」
「ちょっと我慢したら遺産が手に入るからうらやましいって言ってたじゃない。結婚したら」
「金はいくらあってもいいからな」

「嫌よ、あんなの!」
 紅愛は怒りを燃やした。
 両親がまだ20歳の自分を金で売ろうとしているようにしか思えなかった。

 あいつのせいだ。
 ゴミが逃げなければ、自分は幸せだったのに。
 自分よりいい男を捕まえたのも許せない。

 優一を自分の男のように言ったが、実際はつきあってない。彼は紅愛を社長の娘としか思っていない。今日だって彼女が命令したから来ただけだ。

 石霞エンジニアリングは現在の社長が興し、急成長した企業だ。庶民が楽しむアプリ開発から官公庁のサイト管理まで手広くやっている。

 ゴミと結婚した男は副社長のようだ。
 かなりのイケメンで、ブランドの服がさりげなかった。
 ゴミはわかってないようだったが、ゴミが着ていたワンピースもブランドものだった。

 自分がああいう男と結婚するべきだ。
 紅愛はぎらつく目で名刺をにらみつけた。
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