人助け契約婚の結末 ~守るからここにいろ。副社長の優しくて幸せな命令~
 彼の手が髪を撫でた。
 和未は目を閉じ、されるがままにおとなしく座っていた。彼の手は心地いい。ずっと触られていたい。

 彼の手はやがて頬を伝い、彼女の唇をなぞった。
 和未はどきどきして、だけど彼が変なことをするはずがない、と身を任せる。

 彼の指はそっと唇を割って、彼女の歯をなぞる。
 背筋がぞくぞくした。おかしいと思うのに、もっと触れられていたくなる。

「無防備すぎる」
 声がして、和未は目を開けた。晴仁の熱を帯びた瞳に、胸がぎゅっとした。

「君は、どう思っているんだ」
 聞かれて、和未は首をかしげた。
「なにを、でしょう」
「いや……」
 晴仁は言い淀む。

 そのときだった。
 インターホンが来客を告げた。
 立ち上がった和未を制して、晴仁がインターホンに出た。

「私よ」
 女性の声がした。
「母さん、どうしてここに」
「大事な話があるの。入れてちょうだい!」
 晴仁は顔をしかめ、和未を見た。
 なにかよくないことだ、と和未は察した。

「わかった」
 晴仁はエントランスのロックを解除し、インターホンを切った。

「母が来た」
 晴仁が無表情で告げる。
「私は下がった方がいいですね」
「いてくれ。妻として紹介する」
「え?」
「下手に隠さないほうがいい」
 再度、インターホンが鳴った。
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