人助け契約婚の結末 ～守るからここにいろ。副社長の優しくて幸せな命令～

「なんだと？」
「事実無根です。でも炎上しているので勢いが止まりません！」

　彼は和未を見た。
「仕事が入った。テレビでも見てゆっくりしていてくれ」
「はい」
　和未が答えると、彼はスマホで話しながら自室に向かった。

　和未はそわそわした。
　ソファに一人で座るのは抵抗があるし、テレビを一人で見るなんて贅沢が許されるとも思えなかった。
　よくわからないが、会社が大変だということだけはわかった。

　とにかく。
　和未は深呼吸をした。
　自分にできることはなにもない。だったら、彼の日常を守ることが第一だ。彼のために掃除をして、ごはんを作って。
　そう思って、買い物に行くことにした。



　マンションを出たところで、和未は予想外の人物に遭遇した。
「お嬢様……」
　呆然とする和未に、紅愛はつかつかと歩み寄る。

「ずいぶんといいところに住んでるのね」
　憎悪でたぎる目でにらみ、紅愛は言う。

「なんの御用でしょう」
「あんたのせいで、あんたの夫は大変なことになってるのよ」

「どうして」
「あのじじいに、あんたの夫の名刺を渡したのよ。だから復讐されてるってわけ」

「そんな……！」
「あんたがあの人と結婚している限り、嫌がらせされるわよ」
　はっとして、和未は紅愛を見た。

「まさか、彼のお母さんに結婚のことを言ったのは」
「私よ。ゴミと結婚させられてかわいそうだもの。ああいういい男に相応しいのは私みたいないい女よ」

　高飛車な紅愛に、和未は顔を青ざめさせた。