人助け契約婚の結末 ~守るからここにいろ。副社長の優しくて幸せな命令~
 そんなばかな。
 彼は慌てて追跡アプリを立ち上げた。
 彼女のスマホのGPSは、彼女の実家を示していた。

 直後、晴仁は副社長室を飛び出した。
 炎上の対応のために来ていた弁護士に緊急だからと頼み、一緒に来てもらった。企業法務が専門だから民事には疎いだろうが、弁護士の肩書は武器になる。

 タクシーに乗ると秘書に電話をした。自分ぬきで会議を再開してくれ、と。
 副社長がいないなんて、と秘書は悲鳴に似た声を上げたが、緊急事態だ、と押し通した。
 通話を切ると、すぐにスマホを操作した。
 和未の無事を祈り、現時点で打てる手はすべて打つ。

***

 インターホンが鳴って、紅愛たち三人は顔を見合わせた。
 紗世子が出ると、晴仁とスーツを着た年配の男性が映っていた。
「妻が来てますよね」
 低く唸るように彼は言う。

「来てませんよ」
「ならば警察を呼びましょうか」
 警察の単語に紗世子は動揺し、玄関に対応に出る。
 扉が開いた瞬間、晴仁は中に飛び込んだ。

「なによ!」
 紗世子は慌てて追いかける。
 彼はリビングに駆け込む。
 ぐったりと倒れている和未の姿があった。
「和未さん!」

 和未は晴仁を見て目を丸くした。
 起き上がろうとする和未を制し、晴仁は彼女の頭を撫でた。彼女の肌が赤く腫れあがっているのを見て激怒に燃える。

「失礼します」
 年配の男性が入ってきた。
 彼は状況を見て、すぐに119番通報と110番通報をする。
「絶対に許さない。お前らには相応の罰をくらってもらう」
 晴仁の言葉に、達弘が笑った。
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