人助け契約婚の結末 ~守るからここにいろ。副社長の優しくて幸せな命令~
 俊成は名刺を取り出して達弘に差し出した。
 達弘はそれを奪い取り、まじまじと見つめる。

「彼女と縁を切れ」
 晴仁が言う。
「彼女の戸籍は結婚でもう離れているが、それだけでは足りない。もう二度と彼女に接触しないという誓約書にサインしろ」

 日本の法律では法的に親子の縁を切ることはできない。だが、それでも誓約書をとっておきたかった。
 あとは弁護士に頼み、民事保全法にもとづいて接近禁止仮処分命令を裁判所に出してもらう。
 録音と実際のケガ、この二つがあれば仮処分は通るだろうと晴仁は判断した。

「そんなもの」
 達弘が嘲ると、晴仁は口元をゆがめた。
「サインしないなら融資は引き上げる」
「卑怯だぞ!」
「卑怯者に卑怯と言われてもな」
 晴仁は鼻で笑った。

 救急車とパトカーのサイレンが響く。
「お前たちは暴行の現行犯で警察につかまるだろうな」
「ふざけるな!」
「なんで私が」
「私はなにもしてないわ!」
「警察にも言ってみろ、通用するならな」
 晴仁は酷薄な笑みを浮かべて彼らを見下ろす。
 彼らはなにも言えなくなって黙った。

 晴仁は和未の頬を撫でた。
「俺が早く気付けばこんなケガをしなくてすんだのに。すまない」
 和未は弱々しく首を振った。
「来てくれて、うれしい……」
 晴仁は和未を抱き上げた。
 救急車に運ぶために。



 警察の対応を弁護士に任せ、晴仁は和未を乗せた救急車に同乗した。
「どうしてわかったんですか?」
「スマホに追跡アプリを入れておいた。不快ならすまない」
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