人助け契約婚の結末 ~守るからここにいろ。副社長の優しくて幸せな命令~
 和未は今は平気そうだが、そのうち揺り戻しが来るだろう。そのときにどれだけ苦しむことになるのか。
 そのときは絶対に自分が支え、彼女を救う。そう決めていた。

 あともう一つ、片をつけなければならない。
 晴仁はアポをとり、和未に土曜日に出掛ける、と伝えた。

***

 土曜日、和未はどきどきしながら服を選んだ。
 自分で選ぶというのが慣れなくて、これもまた慣れないスマホで、ネットの情報を参考にして服を選んだ。
 紺色のシンプルなワンピースにして白いカーディガンを羽織った。

 連れられて行ったのは、彼の実家だった。
 君はなにもしなくていい。そう言われていた。

 挨拶に来た、と晴仁が告げると、家のリビングに通された。  
 晴仁と並んでソファに座る。

「この前はごめんなさいね」
 香奈枝に謝られて、和未は驚いた。
 自分が謝るのが当たり前で、他人が自分に謝るなんて、ありえない話だった。
 思わず床に土下座した。

「申し訳ございません、不手際がありましたでしょうか」
 謝る和未に、香奈枝はあっけにとられた。それから、納得したように呟く。

「虐待されて、こういう状態なのね。……顔を上げて。あなたはなにも悪くないのよ」
 和未がおそるおそる顔を上げると、困ったような笑みを浮かべた香奈枝がいた。

「私が勝手に思い込んで嫉妬していたの。将吾さんとよく話しあって、誤解だったとわかったわ」
「やっぱり隠し事はよくないなあ。晴仁の言う通りだよ」
 将吾は苦笑する。



 あの日、晴仁の家から帰って来た香奈枝は将吾をなじった。
 自分に対しての裏切りだ、と泣きながら怒った。

「今でもあの女が好きなんでしょ! だから晴仁とあの女の娘を結婚させたんでしょ!」
「彼女のことはとっくにただの思い出だよ。愛しているのはお前だけだ」
 将吾は言った。
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