人助け契約婚の結末 ~守るからここにいろ。副社長の優しくて幸せな命令~
「嘘よ!」
「思い出してくれ。今までの年月を嘘にしないでくれ」
 将吾は妻を抱きしめる。

「そんなに怒るってことはそれだけ俺が好きってことだよな。うれしいなあ」
 のんびりと言う将吾に、香奈枝は毒気を抜かれてしまった。

「だけど、愛してほしいなら素直にそう言ってほしい。ていうか、もうとっくに愛してるんだけど」

 香奈枝は号泣し、何時間も話し合って二人は和解した。



「最初から説明しておけばこんな誤解は起きなかったのに」
 晴仁はあきれた。

「だけど、助けるために結婚するなんてありえないわ。ほかにも方法があったでしょうに」
「あのときはそれが良い方法だと思ったんだよ」
 将吾が言い訳するように言った。

「あなたも嫌だったでしょう。結婚なんて大事なことを」
 和未は慌てて首を振った。
「たくさん助けていただきました。御恩は一生忘れません」
「このまま晴仁さんと結婚を続ける気はないの?」

「母さん!」
「和未さん、行くあてもないんでしょう?」
「そういうことはこちらで話し合うから。もう行こう」
 晴仁は和未を立たせ、歩き出した。
 和未は香奈枝たちに頭を下げ、慌てて彼についていった。



 彼は和未を乗せ、車を走らせる。
 海が見えると、和未は車の窓にはりついた。
 高校の修学旅行で見た以来だった。
 海岸線に、白く波が立つ。繰り返し寄せる波を見ていたら、車が駐車場に入って行った。

 晴仁と一緒に公園の端まで歩いた。
 よくわからないオブジェがあり、花壇には色とりどりの花が咲き乱れていた。少し離れたところに鐘があり、カップルが笑いながら鳴らしていた。

 空は青く、海が良く見えた。遠くまで見通せて、広々とした空間が心地いい。

「我ながらベタだなあ。でもほかに思い付く場所がなかったんだよな」
 晴仁がつぶやく。
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