人助け契約婚の結末 ~守るからここにいろ。副社長の優しくて幸せな命令~
 答えられず、目をそらした。
 その通りだ。優しくて幸せをくれる彼と離れたくなかった。だが。

 好き。

 その一言を、和未には言えそうになかった。

「君はある意味、正直だな」
 くすくすと彼は笑った。
「いつか必ず君に好きって言わせる」
「はい」
 和未はうなずいた。
 彼女の精一杯の返事に、彼は微笑む。

「離婚はしない。俺と一緒に生きていこう」
 和未は胸を熱くした。

 命令じゃない。彼は和美の意志を尊重してくれている。それがうれしくてたまらない。

 でも、もし命令だったとしても。
 和未は熱く潤んだ目で彼を見つめる。
 彼はきっと、和未が幸せになる命令だけをくれる。

「お願いします」
 幸せがこみあげ、言葉がこぼれた。
 晴仁はうれしそうに目を細めた。
 次いで、彼女を抱きしめる。

 がらんがらん、と鐘の音が響いて来た。
 祝福の音のようで、和未は目を閉じた。

 晴仁の温かい胸に抱かれ、和未は幸せを噛み締める。
 海の絶え間ない波の音が響く中、二人はいつまでも抱きしめ合っていた。


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