愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
「愛茉! こっちー」
「由起ごめん、待たせちゃった?」
「私も今来たとこだよ。あれ? Aランチにしなかったの? 愛茉の好きなおろしハンバーグだったのに」
 同期の加藤由起のトレイを見ると、メインがおろしハンバーグになっている。
「目の前で完売の札を貼られたの。残念~! だからBランチにした。ぶりの照り焼きだよ」
 社食の人気メニューダントツ1位はおろしハンバーグだ。大根おろしがハンバーグを隠すくらいたっぷりのっていて、特製のタレがかけられている。老若男女問わずみんな大好きだからすぐに売り切れちゃうのよね。
「また来月だね。ねえ、それより専務たち帰国されるんだって?」
「え……うん、来週ね。どうして知ってるの?」
「噂になってる。帰ったら即結婚発表だって」
「……そう」
「いいの?」
「いいも何も……それが本当なら会社にとってはおめでたいことだわ」
「愛茉……」
 由起は入社からずっと経理部にいる。
 入社してすぐのオリエンテーションで仲良くなった由起とは、プライベートでもよく会う親友だ。
 だからこの2年、私に何が起きたか全部知っている。私の暉明への気持ちも……。
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