愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
「でも信じているんでしょ? 帰国したらちゃんと聞きなさい」
「……」
「愛茉は姫に負けないくらい可愛いのよ? 大きな目に艶のある髪。身長は平均的だけどスタイル抜群だし。受付に採用されたんだから、もっと自信持ちなさい! 姫より若いんだし、ねっ?」
「若いって……フフ……ありがと」
 親友の励ましはありがたい。
 二人の婚約の話はずっとあった。それこそアメリカで出会った直後から。
 でもその話が現実味を帯びてきたのは二人の年齢的なものが大きい。
 そして今回の長期海外出張に椿季さんが同行したことは、その噂に拍車をかけていた。
「あ、そうだ! 話は変わるけど受付のあの女、結婚するみたいよ? 散々愛茉のこといじめておいて、幸せになろうなんて許せないんだけど」
 受付の芳井千香子。彼女にはある弱みを握られていた。そのことでかつてはいじめの対象にされたことも。
「たしかに今でも許せないけど、離れてからは特に何もないし……」
「納得いかない~!」
「何が? あ、由起Aランチにありつけたのかよ」
「伸吾。お疲れ~」
 同期でMRの川島伸吾が同じテーブルにやってきた。由起の彼氏でもある。
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