愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
 この人は一次会の席からやたらと気持ち悪い視線を投げかけてきて、正直良い印象がなかった。
 警鐘が鳴る。
「あ、あの……待っていただいてすみません。私そろそろ――」
「どうして? せっかく起きたんだし、これからじゃん」
 にやにやと笑いながらソファーの隅へ私を追い詰めてくる。
「ちょっ……やめてください」
 無遠慮に肩に置かれた手が気持ち悪い。それにお酒臭い。この人、かなり飲んでる?
「俺、愛茉ちゃん気に入ったんだよ。気づいていただろう? 俺の気持ち」
「キャッ」
 押し倒され、上から乗りかかられる。
「な、何するんですか! この部屋、カメラありますよ。ほら、あそこ!」
「あれは飾り」
「え……」
「ここ、よく使うところなんだ。オーナーが知り合いで。この部屋の防犯カメラは機能していない。いや、機能させていないんだ。誰も見てないから心配しなくていいよ」
 信じられない。こんな人が冬堂製薬の社員だなんて思いたくない。
「やめてくださいっ! 離して!」
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