愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか

暉明の部屋で

 部屋に入ったところで、吐き気がこみ上げる。アルコールと無理やりされた行為とで限界だった。
 胃の中のものを全部吐き出したが、それでも残る不快感。
 気持ち悪い! 気持ち悪い! 気持ち悪い!
 口をゆすいでも、何度もこすっても、消えない生々しい感覚。
「うっ……うっ……」
 ファーストキスだったのに。あんな、最低な奴に奪われるなんて。
 考えるだけで再び吐き気がこみ上げる。
 こんな口、なくなってしまえばいい。
「愛茉? 何してるんだよ⁉」
 様子を見に来た暉明が私を止める。
「そんなにこすったら傷がつく。唇が切れてるじゃないか!」
「気持ち悪い……汚いの」
「え?」
「汚い、汚い! 私の口汚い!」
「愛茉……」
「消えないの……無理やり押しつけられた……気持ち悪い」
「やめろ。それ以上こするな!」
 なおも口を手でこすろうとする私の腕を掴み、暉明が私を抱きしめた。
< 18 / 76 >

この作品をシェア

pagetop