愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
 この会社の若い層なら、ほとんどの人が椿季さんのフォロワーだと思う。
 ヨツノドラックスの娘で、薬剤師。冬堂製薬の開発チームにも入っていて、優秀な上に女優並みの美貌。どこをとっても非の打ち所がない。誰もが彼女に憧れている。
「いつも素敵な写真を投稿されていて、その上ご本人もびっくりするほど美しくて。みんな椿季さんに憧れているんですよ」
「やだ、憧れられるようなこと、何もしていないんだけど。でもフォロワーさんにそう言ってもらえたら嬉しいわね」
 そう言ってニコッと笑顔を向けられると、女の私でもドキッとする。
「テルもお兄さんも出張中だから寂しいわね」
「は、はい……」
 出張中だと知っているんだ。
「愛茉ちゃんの話はよく聞いていたの。二人が帰ってきたら、ご飯でも食べに行きましょうよ。いっぱい話したいことがあるのよ? テルったらさっきもメッセージを送ってきて――」
「あ、あの! 私、ここで降りないといけないので」
「あらごめんなさい。じゃあまたお兄さんづてにお誘いするわ」
「は、はい。失礼します……」
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