愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
 私、田崎愛茉(たさきえま)は大手製薬会社である冬堂製薬の秘書課に勤務している。女子大を出て3年目、今年25歳になる。
 内ポケットに入っているパスポートの持ち主は、私のボスである専務の冬堂暉明(とうどうてるあき)だ。その名の通り、冬堂製薬創業者の直系で、いずれ会社を継ぐいわゆる御曹司だ。

 冬堂家と田崎家について語ると、第二次世界大戦まで遡る。
 私たちの曽祖父は、終戦間際の激戦区フィリピンの戦いで共に戦った仲間だった。
 足を怪我して動くことが出来なくなった冬堂の曾祖父を背負い、洞窟まで運んだのが田崎の曽祖父。アメリカ軍の捕虜になった時も生活を共にし、二人は唯一無二の親友になった。
 捕虜生活から1年後、復員した田崎の曽祖父は、冬堂の家業である冬堂製薬に入社し、冬堂の曾祖父を生涯支えた。
 どちらも男系家系で、次の世代、その次の世代も同じ学年の男子に恵まれ、田崎家はいつも冬堂を支えてきたのだ。
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