愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
「悪かったな、全然連絡できなくて」
「忙しいのはわかってたから……」
「ああ……たしかに忙しかった。でもまさか帰国から1週間も会えないと思ってなかったよ」
「暉くん……聞きたいことがあったの」
 芳井に「会うな」と理不尽な命令をされていたけれど、やっぱりどうしても会いたかった。
 でも椿季さんのことを確認しないまま前へ進むことはできない。
「暉くん……暉くんは椿季さんと婚約のお話が進んでいるの?」
「いや……」
 暉明が一瞬口ごもった。
「椿季のことは……悪い、理由があって今は詳しく言えない」
「……」
「ただ、これだけははっきり言える。俺が好きなのは愛茉だ!」
「……!」
「ずっと愛茉だけを愛してきた。同情とか、その場の雰囲気で愛茉を抱いたわけじゃない」
 暉明が私を抱きしめる。
 理由は言ってくれないけれど、今の言葉は本心なのだと伝わる。
 私は会社のためになる相手ではない。それでもずっと好きだった相手に愛していると言われると心が震える。嬉しい。
 でも……芳井にあの写真を握られている限り、私は身動きが取れないのだ。
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