愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
「……嬉しい。でも私たち、会えないわ」
「なぜだ? 椿季とは本当に違うんだ! あいつを好きだと思ったことは一度もない」
「そうじゃなくて……」
 どうしよう。芳井のことを言ってしまえば、暉明は金森の時のように動いてくれるかもしれない。
 でもその過程で腹立ちまぎれに芳井があの写真をSNSにアップしてしまったら?
 一度ネット上に流れた写真は取り戻せない。削除したところで瞬く間に世界中へ拡がっていくだろう。
 そんなことはできない。一体どうしたらいいの……。
「お、お父さんやお兄ちゃんに知られたら困る……の」
「は?」
「あ、あの人たち過保護だから」
「……なるほど。たしかに俺、愛茉に手を出したことが知られたら二人に殺されるかも……」
 いや、殺されはしないだろうけど。
 でもとっさに出た言葉だったが、過保護な兄のことを考えたらありえない話でもない。
 ただ、相手が暉明となると話は別だ。特に父は違う意味で反対してくるだろう。使用人の娘は言いすぎだとしても、今まで仕えてきた冬堂家の長男と娘が付き合うなんて恐れ多くて考えられないはずだ。
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