愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
「終わったか?」
「お兄ちゃん!」
 面談室を出たところで兄に声をかけられた。
「秘書課に異動になったの……って、その様子だと知ってるのね?」
「当たり前だろう? なぜもっと早く言わなかったんだ」
「え」
 これは何のことを言っているのだろう。
 暉明とのことは秘密のはず。じゃあ芳井のこと?
 墓穴を掘るわけにはいかないから、言葉に気をつけなきゃ。
「テルに聞いた。金森のこと、なんでその時に言わなかったんだよ!」
「あ、そのこと……」
「……? なんだ、ほかにもまだあるのか?」
「ううん! な、何もない! それよりここで話すのはちょっと……」
 この廊下はあまりにも人通りが多い。私たちは使われていない面談室で話すことにした。

「お前の異動願が出ていると親父に報告があった。そうしたら、突然暉明が金森のことを話し出したんだ。俺も親父も驚いたなんてもんじゃない。しかもすでに処分が下された後だった。暉明が偶然お前を助けたとはいえ、そんなことがあったならまずは家族に言うべきだろう?」
「う……ごめんなさい」
「暉明も暉明だ。俺たちに黙ってるなんて」
 それはきっと、その後の一夜があったから言い出しにくかったのだろう。
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