愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
「まったく、どれだけ心配したことか! 愛茉は可愛いから狙われるんだ。もう二度と合コンなんて行くなよ!」
「あれは初めてのことで、先輩に頼まれて仕方なく……」
「受付は狙われやすいんだ。だから俺は反対だったんだよ、愛茉を受付に置くこと。その先輩ってのも無理やり合コンに連れ出すなんてけしからんな」
 けしからんのはもう一人の先輩のほうなんだけどな。
 合コンに誘った先輩はあれからお目当ての人とうまくいき、今は将来を見据えた堅実なお付き合いをしているらしい。幸せいっぱいの先輩を責めるつもりは一ミリもない。
 悪いのは私を襲ってきた金森と、それをネタにいじめてくる芳井だ。
「とにかく他の課でも心配だ。その点秘書課なら安心だろ? まだまだ誰かと付き合うなんて早いからな」
 いや、私もう23歳なんだけど? 過保護な兄にとって、私はまだ小さな妹らしい。これは暉明とのことなんて絶対に言えないわ。
「それにもうじき……」
「え?」
「いや、なんでもない。愛茉、また何かあったら必ず兄ちゃんに一番に言うんだぞ」
「う、うん。わかった」
 兄が何か言いかけたのが気になったけれど、交代の時間が迫っていたので受付へ戻ることにした。
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