愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか

秘書としての日々

 秘書課には母親世代の松永秘書課長の下に3名の部下がいる。
 父は社長の個人秘書なのでそこには含まれず、社長室の隣に自室を持っているため基本的に秘書課にいることはない。
 アットホームな秘書課は居心地がよかった。
 私はつわりに苦しんでいる岡島さんの代理として、雑用係をしながら仕事を学んでいった。

 そして迎えた4月。暉明が専務取締役に就任した。
 大ヒット商品『ウインタースコール』を生み出した立役者なのだ。「創業者一族だからといって、まだ若いのに……」などと否定的なことを言うものはおらず、誰もが納得の昇進だった。
 第一秘書はもちろん兄の蒼典だ。
「愛茉! これからは兄ちゃんがそばで守ってやるからな!」
「……」
 あの時言いかけたのはこのことだったのか。
 ……これはまずい。
 この過保護な兄にバレず、ひっそり付き合い続けるなんてできるのだろうか。
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