愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
「あ、あのね。愛茉ちゃんに話しておきたいことがあったの」
「話?」
 そういって、椿季さんが居住まいを正した。

 プルルルル―― プルルルル――

「わ! ごめんなさい! マナーモードにしていたつもりだったのに」
 びっくりするくらいの音量でスマホが鳴った。これはよくあることだ。きっと消音ボタンと音量を上げるボタンを間違えて長押ししたのだろう。
「ちょっとごめんなさい」
「どうぞどうぞ」
 電話に出るため席を外した椿季さんを見送っていると、どさっと何かが落ちた音がした。
 振り返ってみると、椿季さんが背もたれにかけていたトートバックを隣の人が落としてしまったようだった。
「す、すみません! どうしよう。散らばっちゃった」
「大丈夫ですよ、今電話中なのでお伝えします」
「ごめんなさい、これ大事なものなのに」
「え……」
 拾った鞄の中に入っていたのは母子手帳だった。
「あ、これも! 無事でよかったー」
 さらに後ろに滑り落ちてしまっていた写真のようなものを渡される。
 これは、胎児のエコー写真?
「すみませんでしたってお伝えください」
「……はぃ」
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