愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
 だが、それならお互いにこの婚約騒ぎを利用できないかと考えた。留学を終えたら、次から次へと縁談が舞い込むのは目に見えている。それは椿季も同じだった。
 椿季は上に兄が二人いる。ヨツノを継ぐ必要はないが、ヨツノの令嬢だ。俺と同じく見合い話が後を絶たなくなるだろう。
 ならこのままお互いがお互いの風よけになれたら自由な時間を過ごせるんじゃないかと。
 だから俺たちは否定も肯定もせず、噂をそのままにしておいたのだ。
 願わくば愛茉の結婚適齢期まで。
「でもそれじゃあ、期待している人たちはどうなるの? 社長も、椿季さんのご両親も、二人の結婚を望んでいるんじゃ……」
 愛茉が不安そうに言う。もちろんそのことは考えていた。
「大丈夫だ。ちゃんと考えてるから。それより、悪かった」
「え?」
「ずっと言えなくて。椿季と蒼典のこと」
「……なんとなく理由はわかるから」
「……」
「お兄ちゃんでしょう? お兄ちゃんが口止めしていたんだ」
「愛茉……」
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