愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
「とりあえず妊婦さんもいることだし、座って話をしませんか?」
 社長の言葉にハッとして父と兄も顔を上げた。
「そ、そうだ。椿季さんを立たせたままだった。失礼しました」
「椿季、大丈夫か⁉」
「う、うん。私は全然平気だから」
 突然全員の視線が集まったので椿季さんが慌てている。
 しかしボーっと見ている場合ではない。お客様が来られたのだからお茶を準備するのが私の仕事だ。
 私はそっとその場を離れ、すでにお茶の準備に取り掛かっている松永課長のもとへ行った。
 
 社長室に戻ると、一人かけのソファに社長と暉明が、向かい合って長いソファに四野父娘が座っていた。父と兄は社長の後ろに控えている。
「四野社長。本来ならこちらから伺って、うちの田崎からお詫びに参らねばならないところを、わざわざお運びいただき申し訳ありませんでした」
 社長が、まずこの場を代表して詫びた。
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