愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
「あ、愛茉ちゃん!」
 え?
「椿季さん……?」
 呼ばれた方向を見ると、そこには肩までのサラサラの髪に細身のパンツスーツを着た四野椿季(よつのつばき)がいた。
 彼女はクローバル展開している大手ドラッグストア『ヨツノドラックス』のご令嬢で、現在は薬剤師の資格を持つ冬堂製薬の開発部研究員の一人だ。
 すらりとして頭の小さい彼女は、8等身美人。暉明と同様、この広い空港内でもまわりから注目を浴びていた。
「あ、えっと……椿季さんも?」
「そうなの。テルと蒼典だけでも充分だと思うんだけどね。社長と愛茉ちゃんのお父様からどうしても同行してほしいってお話があって急遽同行することになったの」
「悪かったなー。まあ、薬の知識が必要なのは確かなんだ。椿季なら語学も堪能だしな」
「語学は何とかなるけど、本業の方はちょっと不安よ? 私なんかで務まるのかしら。もっと知識が豊富なベテランの研究員を連れていけばいいのに」
「問題ない。蒼典から連絡あっただろう? あっちの担当者も同年代で話しやすい環境のようだ。長期戦だし、まずはコネクション作りからだ。椿季ならうってつけだろう」
「ふふふっ、見たわよー。蒼典、SNSにアップしてたでしょ? あれ見てちょっと気が楽になった」
< 6 / 76 >

この作品をシェア

pagetop