愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
「つまり、最初から椿季と暉明君は何もなかったと……」
「はい」
「お父さん、テルは私にとって仲間というか、すごく気の合う友達なの。 最初から私が好きなのは蒼典よ」
「僕も同じなんです。椿季とは考え方も似ていて、気の合う友達だと思っています。でも僕が好きなのは……」
 暉明が私のほうを見た。
 自然と皆の視線が私に集まり緊張する。
「愛茉なんです。もうずっと小さい頃から愛茉だけを想ってきました」
「……はぁ、すっかり騙されていたってことか」
「お父さん、人聞きが悪いわよ。私はSNSに三人の写真をアップしただけなのに、フォロワーさんの勝手な憶測がひとり歩きしていっただけなのよ? テルと付き合うなんて一言も書いてないのに」
「確かにね。でも四野社長のお気持ちもわかるよ」
「俺も椿季も大切な人を守りたかったんです。否定して本当のことを知られたら、蒼典も愛茉も変に巻き込まれる可能性がある」
「……なるほどな。それは十分に考えられる。田崎兄妹による略奪愛……というようなことだろう?」
「ああ。SNSって怖いからな。実情なんて知ったことじゃない。勝手に物語を作り上げられるから」
 そこにいる全員が、その考え方には納得だった。
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