愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
 「この場をお借りして俺からも言わせてください。おじさん、愛茉を愛してます。だから俺にください! 一生かけて幸せにします」
「暉明……! だ、だが田崎は」
「義典、まさか『田崎は冬堂に仕える立場なのに』なんて言わないよな?」
「寛明……」
「もう、そういうのはやめにしないか? 俺は悪習だと思ってた。秘書の前にお前は俺の親友じゃないか」
「父さん、俺も。正直蒼典は優秀だ。俺の秘書じゃなかったらきっとこいつ自身の力で充分出世していたと思う。曽祖父さんは田崎の曽祖父さんに助けてもらった身なんだろう? 世話になってるのは冬堂の方じゃないか」
「その通りだ。暉明の代で冬堂と田崎は縁戚になる。じいさん達も喜んでるよ」
「社長……」
 それはきっと私たち田崎家が一番欲しかった言葉かもしれない。身に染み付いた忠誠心でずっと罪悪感を感じていたから。胸が詰まって喉の奥が痛い。父も兄も同じだったのだろう。目頭が熱くなり言葉が出てこなかった。
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