愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
「愛茉」
「ん? どうしたの……え?」
 振り返ると、暉明がスッと跪く。
「俺と、結婚してください!」
 そう言って、明らかに指輪だとわかる、小さな赤い箱をパカッと開けた。
 びっくりするほど大きくてきらきら光るダイヤの指輪がそこにあった。
「て、暉くん!」
「ごめん。俺、全部後先になってしまって。愛茉にプロポーズする前におじさんに結婚の許可をもらってしまったり、それ以前に勝手に親父に話してしまうし、グダグダだった」
「……ううん。嬉しかったよ」
「愛茉……」
 胸がいっぱいで涙が溢れた。
「プロポーズ、お受けします。よろしくお願いします!」
 暉明の顔がぱあっと明るくなる。
「幸せにする」
 暉明が左手の薬指に指輪をはめてくれた。
「あ、ちょっとゆるいな」
「……うん」
「ごめん、急いで買いに行ったから」
「もしかして、これを買うために今日遅くなったの?」
「あ、ああ。俺も蒼典も、今日親父たちに言うことは決めてたんだ。椿季の体調を考えたら先延ばしできないからな。ただ……一番大事なことを忘れてた。今週末、サイズ直しに行こう」
「うん。じゃあ失くしたら大変だから今はしまっておくわ」
「あと、明日は同期と飲みに行くことになったから遅くなる」
「わかった」
「だから今日は一緒に風呂に入ろう?」
「え」
 どういう話の流れよ!
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