愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
謝罪 side暉明
「突然呼び出して悪かったな」
「いや、専務こそお忙しいのに」
「やめてくれ。今日は同期として飲みに誘ったんだから」
「そうか……そう言ってくれて嬉しいよ」
 俺は警備室を出た後、社長である父親に許可を得て、各方面に調整を入れることにした。
 そして今、芳井の婚約者である渡会を呼び出している。
「けど、呼び出しの理由には見当がついている」
「え?」
「千香子……芳井千香子のことだろう?」
「……」
「昨日、千香子から全部聞いた。かつて田崎愛茉さんにしてきたことを」
 芳井が渡会に話した? 先回りして自分にいいように言いくるめたのか?
「誤解しないでほしい。おそらく千香子は俺に真実を話したと思うから」
「……愛茉をいじめていたことか?」
「ああ。全部聞いた」
「俺の写真で脅していたことも?」
「ああ……。正直、驚いた。自分の婚約者がそんなことをしていたなんてな……」
 渡会は同期の中でもとびぬけて優秀なやつだった。
 ラガーマンのような体躯に爽やかな笑顔、語学が堪能で、任された仕事では想定以上の結果を出し、いずれは冬堂の幹部に出世するだろうと誰もが思っていた。
 まさかそんな女に騙されるなんて考えてもいなかったことだろう。
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