愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
「それは……想定外だった」
「渡会は留学経験もある。いずれは海外に行ってもらうつもりだったが……」
 きっと本人は海外赴任するとしても北米だと思っていたことだろう。アジアとなると話は変わってくる。しかも何もかも一からのスタートだ。簡単に帰ってくることはできないだろうし、これから何十年かをインドネシアで過ごす可能性もある。
 ただこれは大きなプロジェクトだ。もちろん栄転だし、それなりにやりがいもあるのだが――。
「ぜひ行かせてほしい!」
「渡会……いいのか? そんなに簡単には帰ってこれないんだぞ? それに芳井……奥さんだって」
「正直、自分の力を試してみたいと思ってた。俺にとっては願ってもない話だ。千香子は……大丈夫だ。文句を言うかもしれないが、ついてくるよ」
 心配は不要だったか。渡会は自信に満ち溢れていた。
 まあ、渡会ならきっと成功するだろう。
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