愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
「愛茉! 大丈夫か⁉」
「良かった……」
「田崎さん、本当にごめんなさい!」
 芳井が床にうずくまっている愛茉に縋り付いてくる。
 正直俺にとってはそんな態度も煩わしかった。しかし愛茉は――。
「芳井さん、消してくれてありがとうございます。あの、立ってください」
「田崎さん……」
「これからはもうやめてくくださいね。それと、体を大事にしてください」
「え、どうしてそれを……」
「カバンにキーホルダーをつけているじゃないですか。芳井さんがキーホルダーなんてどうしたんだろうと思って目がいきました」
 確かに芳井のカバンにはキーホルダーがついていた。
「【赤ちゃんがいます】⁉」
「実はそうなんだ。千香子は妊娠していて」
 渡会が照れくさそうに言う。
「じゃあ、転勤には……」
「出産のときだけ帰国する。でもまずは新しい土地で二人の生活基盤を整えるつもりだ」
「専務、この度は渡会にチャンスをくださりありがとうございます」
「あ、ああ……」
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